身体の細胞が少しづつ意識と結びついていく。
瞳は瞼の中で目覚めをぼんやりと自覚する。
肩から腕へ指先へとジンジンと熱い。
どれだけ眠っただろうか?
まだ、半分は眠っている。
しばらくは、眠気に身を任せておこう。
すっかり目覚めるまで。
わたしは眠っていた。
今、目覚めようとしている。
このまどろみの中で。
眠り人が展開するおぼろげな残像。
脈絡のないスライドショー。
雑踏の中で絡み合うノイズ。
その奇妙な展開が不思議と心地よい。
現実ではない、夢の中での出来事。
という安心感。
この展開の先に、きっとまだ何かがある。
という期待感。
わたしは「眠り」の中のわたしを知らない。
その「眠り」はわたしの中にある。
わたしは眠りの中へ落ちていった。
わたしの中の眠りに落ちるわたし。
わたしの中の眠りに落ちたわたし。
わたしが知り得ないわたしをわたしが内包している。
不思議な構造だ。
わたしはわたしをわたしの中に探している。
でも、やっぱり探しきれない。
いつものことだ。
期待は叶わず、目覚めを迎える。
一瞬のこと。
ぼんやりのすべてがかき消される。
いつでもそうだ。
奇妙な展開が織りなす幻影は、
持ち帰ろうとするも、
決して記憶には残らない。
いつでもそうだ。
幻影は実在する。
わたしはそう思っている。
ただ、五感では感知できない。
脳は眠らない。
わたしは一人きりの時間が欲しい。
それを満たしてくれるのは「眠り」だけ。
わたしがわたしと対峙する時間。
わたしはそんなわたしを生きている。
眠りは繰り返される。
わたしの手の届かないところで。
五感の記憶を重ねながら。
わたしは、真夜中の公園のベンチに横たわっている。
真夜中の公園は相変わらずベンチが点滅している。いくつかの灯りが消え、いくつかの灯りが点く。ベンチに座る人、ベンチを立ち去る人。そんな光景が遠く彼方にまで繰り広げられています。わたしのベンチもまた、彼方からは点滅するベンチのひとつとして映るのでしょう。