バトンプロジェクト:二坪の眼-掲示板

-思考実験工房-
主催:DWKS (バトンすべきものは何?)

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●ノコギリアン・ガッカイ 2023
『ノコギリヤネ・コウゲンガク』
https://36way.net/nag/nag2023.htm
会期:2023.12.21 - 2024.2.29
会場:ノコギリアン・コウバ
主催:ノコギリアン・コウバ、二坪の眼
展示:Koubas_Only(Natty & Colin)
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・ノコギリアン文庫
断章“ノコギリヤネのある風景”

【考察】:ノコギリアン文庫『断章“ノコギリヤネのある風景”』


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[494] 複眼に聞く aoki@dwks 2019/06/08(土) 23:32:42

[576] ■公園のベンチ(PDF:1-12) aoki@dwks 2020/03/29(日) 18:27:30 [添付]
[949] 透過する影 aoki@dwks 2020/09/10(木) 01:51:30 [添付]
[1099] 気袋2「ギフト」 aoki@dwks 2021/01/11(月) 11:35:10
[1103] 気袋3「交換」 aoki@dwks 2021/01/20(水) 13:06:37
[1115] 白髭 aoki@dwks 2021/04/24(土) 09:14:58
[1243] 白髭2 aoki@dwks 2022/12/25(日) 11:51:22

[576] ■公園のベンチ(PDF:1-12)  aoki@dwks  - 2020/03/29(日) 18:27:30 -

以下、12編をPDF(pbenchi_1-12.pdf)化しました。 * 複眼に聞く[#494] * 石ころ[#495] * なごり[#496] * 眠り人[#497] * とびら[#500] * まどろみ[#503] * 錯覚[#506] * 世間の枠[#507] * 浮雲[#508] * 輪転写[#509] * 大輪[#516] * 気袋[#517]

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[949] 透過する影  aoki@dwks  - 2020/09/10(木) 01:51:30 -

真夜中の公園は相変わらずベンチが点滅している。 いくつかの灯りが消え、いくつかの灯りが点く。 ベンチに座る人、ベンチを立ち去る人。 そんな光景が遠く彼方にまで繰り広げられています。 わたしのベンチもまた、 彼方からは点滅するベンチのひとつとして映るのでしょう。 -- 添付画像【949_公園のベンチ.jpg : 352.4KB】

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[1099] 気袋2「ギフト」  aoki@dwks  - 2021/01/11(月) 11:35:10 -

re:[#517] http://div.36way.net/bbs/brd/ad138/upload/576_pbenchi_1-12.pdf ---- ■気袋2「ギフト」 乳母車を引く、老婆。 闇の中から現れた。 ゴロゴロと近づいて来る。 あれ?さっきのばぁさんか? ゴロゴロと音もなく近づいて来る。 あの乳母車は、やっぱりさっきのばぁさんだ。 「やっぱり、ここにおったな。」 「さっき会ったばかりじゃないですか。忘れ物ですか?」 「そうか...まだ気付いておらんようじゃな...。」 「へ?なにが?ですか?」 「あんたに会ったのは一年以上前じゃ。わしは、ずっと気袋を集めては捌いておった。」 「一年?ですか?わたしはそんなに長くここに居ませんよ。まだ眠ってもいないのに。」 「ふむ。わしが悪かった。時間なんて有って無いようなモンじゃからな。気にせんで良い。それより、あんたの気に引き合いがあってな。報告に来たんじゃよ。」 「わたしの気、がですか....」 「そうじゃ。この中を覗いて見れ。あんたには判るじゃろ。」 「ひとつだけ、光ってます。」 「それを手に取りなされ。“ギフト”じゃよ。」 「ギフト?」 「その気の光は、あんただけに見える。わしには見えん。」 わたしは両手でその気袋を取り出した。 全身に温もりが流れた。 わたしは涙した。 涙が止まらない。 何故、自分が泣いているかもわからない。 自分を自分でどうすることもできない。 わたしの中で誰かが泣いている。 不快な涙ではない。 それを止めてはいけない。 涙が枯れるまで泣き切ろう。 泣かせてあげよう、と思った。 真夜中の公園は相変わらずベンチが点滅している。いくつかの灯りが消え、いくつかの灯りが点く。ベンチに座る人、ベンチを立ち去る人。そんな光景が遠く彼方にまで繰り広げられています。わたしのベンチもまた、彼方からは点滅するベンチのひとつとして映るのでしょう。

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[1103] 気袋3「交換」  aoki@dwks  - 2021/01/20(水) 13:06:37 -

「座ってもええかな?」老婆の声がした。涙も出尽くしたところだった。 「どうぞ。」 「ありがとさんね。」老婆はそう言ってベンチに腰を下ろした。 「その気袋の主はあんたのことを知っておったぞ。」 「わたしを?ですか?」 「そうじゃ。この公園であんたと話した、と言っておった。」 「え?誰だろう?」 「あんたと話してこの公園を立ち去った、と言っておった。」 「あぁ...あの人、かなぁ...。でも、姿は見えなかった。灯りだけの人、声だけの人、でした。この公園に来て間もなくの出来事でした。」 「たぶん、その御人じゃな。」 「なんだか難しい話をしていましたよ...。あの人がわたしを見つけて座ったのに、わたしがあの人を見つけたようなことを言う...わたしは、ほとんど聞くだけでしたけどね。」 「はは、出会いなんてそんなモンじゃろて。深く考えんでもええことじゃて。」 「不思議な出来事でしたよ。」 「その不思議がまた返ってきたわけじゃな、わははは。不思議じゃ、不思議じゃ。不思議じゃのぉ。」 「この気袋。涙が溢れました。止まりませんでした。不思議です。」 「自分のチカラではどうにも及ばないことがある。そこに執心しても仕方がない。それはそういうもんじゃ、と受け入れるしかない。じゃがそれは、その気持ちがないと受け入れることはできんな。あんたの気は受け入れた。素直に。」 「この涙はなんなんでしょう....わたしの涙ではないような気がするのです。」 「あんたの涙じゃよ。その涙はあんたじゃよ。」 「わたしのなみだ...。わたしのふしぎ...?」 「不思議は不思議。不思議に囚われなさんな。因果は有るが因果は見えん。ほら、二次元から三次元は見えんじゃろ。見えんが...有る。それが不思議じゃな。」 「三次元からは二次元が見える、ということですね。」 「さて、それもどうかな?二次元は三次元を構成する一面じゃろうが、三次元ではない。二次元の視界を三次元の中で再現できるじゃろぉうか?きっと、情報が多過ぎるわな。そこには整理という作業が働く。その整理は見える見えないを都合する惑わしがある。危うい世界じゃな。」 「ますます解りません。」 「暖かい布団に包まれていても、寒気に似たようなものが走ることがある。悪寒、というものじゃな。病は気から、と言うじゃろ。病を治すのも、気なんじゃな。」 「気、とは何なんですか?」 「吸って吐くものじゃ。」 「呼吸ですか?」 「交換じゃな。」 真夜中の公園は相変わらずベンチが点滅している。いくつかの灯りが消え、いくつかの灯りが点く。ベンチに座る人、ベンチを立ち去る人。そんな光景が遠く彼方にまで繰り広げられています。わたしのベンチもまた、彼方からは点滅するベンチのひとつとして映るのでしょう。 ---- > 複眼に聞く[#494] https://div.36way.net/bbs/brd.cgi?cmd=one;no=494;id=ad138

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[1115] 白髭  aoki@dwks  - 2021/04/24(土) 09:14:58 -

「さて、わしの役目は果たしたぞ。そろそろ出かけるわい。」 「また気袋集めですか?」 「籠の中には気袋がたくさんあるん、じゃが。増えもせんし減りもせん。これも不思議じゃな。わしはゴロゴロと移動するだけじゃ。あははは。」 そうして老婆は乳母車を押して行った。 気袋... ギフト... 交換... なんだろう? これは何かの知らせなのか? あの老婆... なぜ?わたしなのか? 風。 風が頬を撫でた。 わたしに触れるもの。 真夜中の公園。 自分の場所を求めて此処に来た。 ひとつの干渉も及ばない、 わたし一人の場所... と、思って来たのだが... 此処には予期せぬ風が吹いている。 私を突き動かす風。 いや、 わたしだけではないはずだ、きっと。 この公園を立ち去った御人も、 木枠を忘れた香りの人も、 そして、乳母車の老婆も。 みんな、風に運ばれてきたんだ。 「よろしいかな?」 隣から声がした。 見てみると、 白髭の老人が横に座っている。 え? いつから其処に? 真夜中の公園は相変わらずベンチが点滅している。いくつかの灯りが消え、いくつかの灯りが点く。ベンチに座る人、ベンチを立ち去る人。そんな光景が遠く彼方にまで繰り広げられています。わたしのベンチもまた、彼方からは点滅するベンチのひとつとして映るのでしょう。

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[1243] 白髭2  aoki@dwks  - 2022/12/25(日) 11:51:22 -

011:公園のベンチ-016-白髭2 https://36way.net/page1/011/11-016.htm 「よろしいかな?」 「え?いつから其処に?」 「私はずっと此処に居ました。あなたにとっては、“今から”になるでしょう。」 「は?からかっているのですか?」 「いえいえ、ご気分を害されたらごめんなさい。」 白髭はつづけた。 五感で感知できる範囲はたかが知れています。 狭い世界を生きているもんです。 五感では感知できない世界が存在します。 それは存在しないに等しい、かもしれません。 それでも、 感知できない世界の存在からなんらかの影響を受けています。 あるいは、 感知できない世界へなんらかの影響を及ぼしています。 それは計算できないし予測もできません。 確かめるすべもありません。 感知できないのですから。 ただ、脳には感覚的にそれを想像すること、 あるいは察知する能力が備わっています。 それは感知できる範囲で表わすことができるものではありません。 言葉でもないし、絵でもないし、造形物でもない。 そのいずれでもない感覚は単なる波のようなものでしょう。 常に振動していて留まることはありません。 カタチとして捕まえることはできないモノです。 そんな存在が在るということ、 そんな世界の中に我々が居るということ、 それを知ることが、 今在る自身を受け留めることにつながっていくのです。 真夜中の公園は相変わらずベンチが点滅している。いくつかの灯りが消え、いくつかの灯りが点く。ベンチに座る人、ベンチを立ち去る人。そんな光景が遠く彼方にまで繰り広げられています。わたしのベンチもまた、彼方からは点滅するベンチのひとつとして映るのでしょう。 そして、白髭は消えた。

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