「さて、わしの役目は果たしたぞ。そろそろ出かけるわい。」
「また気袋集めですか?」
「籠の中には気袋がたくさんあるん、じゃが。増えもせんし減りもせん。これも不思議じゃな。わしはゴロゴロと移動するだけじゃ。あははは。」
そうして老婆は乳母車を押して行った。
気袋...
ギフト...
交換...
なんだろう?
これは何かの知らせなのか?
あの老婆...
なぜ?わたしなのか?
風。
風が頬を撫でた。
わたしに触れるもの。
真夜中の公園。
自分の場所を求めて此処に来た。
ひとつの干渉も及ばない、
わたし一人の場所...
と、思って来たのだが...
此処には予期せぬ風が吹いている。
私を突き動かす風。
いや、
わたしだけではないはずだ、きっと。
この公園を立ち去った御人も、
木枠を忘れた香りの人も、
そして、乳母車の老婆も。
みんな、風に運ばれてきたんだ。
「よろしいかな?」
隣から声がした。
見てみると、
白髭の老人が横に座っている。
え?
いつから其処に?
真夜中の公園は相変わらずベンチが点滅している。いくつかの灯りが消え、いくつかの灯りが点く。ベンチに座る人、ベンチを立ち去る人。そんな光景が遠く彼方にまで繰り広げられています。わたしのベンチもまた、彼方からは点滅するベンチのひとつとして映るのでしょう。