バトンプロジェクト:二坪の眼
[トップ|投稿|メニュー|←|→]
[883/997]
[517]気袋
by aoki@dwks
5f85292036
[2019/10/02(水) 21:50:49]
真夜中の公園は相変わらずベンチが点滅している。いくつかの灯りが消え、いくつかの灯りが点く。ベンチに座る人、ベンチを立ち去る人。そんな光景が遠く彼方にまで繰り広げられています。わたしのベンチもまた、彼方からは点滅するベンチのひとつとして映るのでしょう。
乳母車を引く、老婆。
闇の中から現れた。
ゴロゴロと近づいて来る。
こんな夜中に老婆が散歩?
ゴロゴロと音もなく近づいて来る。
老婆はわたしの前で乳母車を止めた。
「もし。気を分けてはくださらんか。」
やぶからぼうだった。
「気を集めておってのぉ。あんたの気を分けてはくださらんか。」
奇妙ではあるが、危害はなさそうだ。
「気?....ですか?」
「そうじゃ。あんたの気じゃよ。」
「分ける....と言っても、わたしにはどうしたものかわかりません。」
「この袋に気を吐くだけじゃ。」
「気?を?....ですか?」
「息を吐くだけじゃよ。それで気が取れる。」
「へ?....気とはそういうものなんですか?」
「わしは、そうやって集めておる。」
老婆はわたしに気袋を差し出した。
なんの仕掛けも無い透明なビニール袋だった。
「わかりました。やってみます。」
わたしは気...