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by  aoki@dwks    2021/01/11(月) 11:35:10

re:[#517] http://div.36way.net/bbs/brd/ad138/upload/576_pbenchi_1-12.pdf ---- ■気袋2「ギフト」 乳母車を引く、老婆。 闇の中から現れた。 ゴロゴロと近づいて来る。 あれ?さっきのばぁさんか? ゴロゴロと音もなく近づいて来る。 あの乳母車は、やっぱりさっきのばぁさんだ。 「やっぱり、ここにおったな。」 「さっき会ったばかりじゃないですか。忘れ物ですか?」 「そうか...まだ気付いておらんようじゃな...。」 「へ?なにが?ですか?」 「あんたに会ったのは一年以上前じゃ。わしは、ずっと気袋を集めては捌いておった。」 「一年?ですか?わたしはそんなに長くここに居ませんよ。まだ眠ってもいないのに。」 「ふむ。わしが悪かった。時間なんて有って無いようなモンじゃからな。気にせんで良い。それより、あんたの気に引き合いがあってな。報告に来たんじゃよ。」 「わたしの気、がですか....」 「そうじゃ。この中を覗いて見れ。あんたには判るじゃろ。」 「ひとつだけ、光ってます。」 「それを手に取りなされ。“ギフト”じゃよ。」 「ギフト?」 「その気の光は、あんただけに見える。わしには見えん。」 わたしは両手でその気袋を取り出した。 全身に温もりが流れた。 わたしは涙した。 涙が止まらない。 何故、自分が泣いているかもわからない。 自分を自分でどうすることもできない。 わたしの中で誰かが泣いている。 不快な涙ではない。 それを止めてはいけない。 涙が枯れるまで泣き切ろう。 泣かせてあげよう、と思った。 真夜中の公園は相変わらずベンチが点滅している。いくつかの灯りが消え、いくつかの灯りが点く。ベンチに座る人、ベンチを立ち去る人。そんな光景が遠く彼方にまで繰り広げられています。わたしのベンチもまた、彼方からは点滅するベンチのひとつとして映るのでしょう。

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[494] 複眼に聞く
     aoki@dwks 2019/06/08(土) 23:32:42
[495] 石ころ
     aoki@dwks 2019/06/11(火) 00:30:37
[496] なごり
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[497] 眠り人
     aoki@dwks 2019/06/12(水) 22:52:11
[500] とびら
     aoki@dwks 2019/06/18(火) 01:30:30
[503] まどろみ
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[506] 錯覚
     aoki@dwks 2019/07/12(金) 12:29:15
[507] 世間の枠
     aoki@dwks 2019/07/22(月) 11:44:10
[508] 浮雲
     aoki@dwks 2019/07/24(水) 14:42:51
[509] 輪転写
     aoki@dwks 2019/08/06(火) 08:10:38
[516] 大輪
     aoki@dwks 2019/09/14(土) 12:35:32
[517] 気袋
     aoki@dwks 2019/10/02(水) 21:50:49
[576] ■公園のベンチ(PDF:1-12)
     aoki@dwks 2020/03/29(日) 18:27:30
(F)
[949] 透過する影
     aoki@dwks 2020/09/10(木) 01:51:30
(F)
[1099] 気袋2「ギフト」
     aoki@dwks 2021/01/11(月) 11:35:10
[1103] 気袋3「交換」
     aoki@dwks 2021/01/20(水) 13:06:37
[1115] 白髭
     aoki@dwks 2021/04/24(土) 09:14:58
[1243] 白髭2
     aoki@dwks 2022/12/25(日) 11:51:22

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