バトンプロジェクト:二坪の眼 for PDA

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by  aoki@dwks    2019/07/04(木) 08:44:06

身体の細胞が少しづつ意識と結びついていく。 瞳は瞼の中で目覚めをぼんやりと自覚する。 肩から腕へ指先へとジンジンと熱い。 どれだけ眠っただろうか? まだ、半分は眠っている。 しばらくは、眠気に身を任せておこう。 すっかり目覚めるまで。 わたしは眠っていた。 今、目覚めようとしている。 このまどろみの中で。 眠り人が展開するおぼろげな残像。 脈絡のないスライドショー。 雑踏の中で絡み合うノイズ。 その奇妙な展開が不思議と心地よい。 現実ではない、夢の中での出来事。 という安心感。 この展開の先に、きっとまだ何かがある。 という期待感。 わたしは「眠り」の中のわたしを知らない。 その「眠り」はわたしの中にある。 わたしは眠りの中へ落ちていった。 わたしの中の眠りに落ちるわたし。 わたしの中の眠りに落ちたわたし。 わたしが知り得ないわたしをわたしが内包している。 不思議な構造だ。 わたしはわたしをわたしの中に探している。 でも、やっぱり探しきれない。 いつものことだ。 期待は叶わず、目覚めを迎える。 一瞬のこと。 ぼんやりのすべてがかき消される。 いつでもそうだ。 奇妙な展開が織りなす幻影は、 持ち帰ろうとするも、 決して記憶には残らない。 いつでもそうだ。 幻影は実在する。 わたしはそう思っている。 ただ、五感では感知できない。 脳は眠らない。 わたしは一人きりの時間が欲しい。 それを満たしてくれるのは「眠り」だけ。 わたしがわたしと対峙する時間。 わたしはそんなわたしを生きている。 眠りは繰り返される。 わたしの手の届かないところで。 五感の記憶を重ねながら。 わたしは、真夜中の公園のベンチに横たわっている。 真夜中の公園は相変わらずベンチが点滅している。いくつかの灯りが消え、いくつかの灯りが点く。ベンチに座る人、ベンチを立ち去る人。そんな光景が遠く彼方にまで繰り広げられています。わたしのベンチもまた、彼方からは点滅するベンチのひとつとして映るのでしょう。

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[494] 複眼に聞く
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