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[512] ■幻速
     aoki@dwks 2019/08/14(水) 23:58:33
[558] ■闇の壁
     aoki@dwks 2019/12/13(金) 05:32:35

by  aoki@dwks    2019/08/14(水) 23:58:33

白線で仕切られた屋外駐車場。 10台ほどが止まっている。 ほぼ満車に近い。 道路際に一台の空きがあった。 私は駐車場内に車を乗り入れた。 ギアをバックに入れる。 サイドミラーとバックミラーを確認。 左に止まっている車との距離を測りながら、 ゆっくりとハンドルを切っていった。 バックミラーに映る車止めの縁石。 駐車ラインに沿ってバックする。 左に止まっている車に注意を払い、 視界にも収めていった。 と、突然、 バックするスピードが速くなった。 あれっ?と。 反射的にアクセルを外す。 ブレーキも踏んだ。 それでも車はバックしていく。 何が起こったんだ?! なぜだ?! そんなはずがない! 制御不能の異常事態。 ギアをニュートラルに入れる。 サイドブレーキも引いた。 それでも、 車はスピードを上げてバックする。 まるで車が宙に浮いているような違和感。 どうなっちまったんだ。 このまま進むと縁石を飛び越える勢いだ。 私は混乱した。 私にできることはすべて行った。 それでも制御できない事態。 ぶつかる? と、その時。 左前方に車が前進していくのが見えた。 左に止まっていた車だ。 その車はハンドルを切って駐車場から出ていった。 私がバックで駐車しようとしたちょうどその時、 左に止まっていた車が発進したのだった。 一瞬の出来事。 バックする私の隣で前進する車が視界に入った時、 私には制御不能なスピード感が生まれたのだろう。 すれ違いの相対速度。 私の車は止まっている。 私の車は止まっていたんだ。 ふぅー。 良かった。 異次元の光景だった。 不意なる不測の出来事。 思い込みの脳は自分の位置を見失う。 それは、恐怖。 それは、めまい。 空っぽになった左の駐車スペース。 事態の全てがそこにあった。 私は戻ってきた。 と、安堵する。

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by  aoki@dwks    2019/12/13(金) 05:32:35

扉を開けたら闇だった。 闇が壁となって口を開けている。 その形相には魅惑が漂っている。 来る者を阻みながら手招きする。 そして、戸惑い。 暗黒の壁、とでも言うのだろうか。 私は立ち尽くした。 暗黒の壁を前に。 入口なのか?出口なのか? 入るべきか、入らざるべきか。 私はその扉を開けてしまった。 私は暗黒の壁を見てしまった。 好奇心。 入れるものだろうか? 戻れるものだろうか? 暗黒は未知の世界。 形もなければ色もない。 凹凸もなければ濃淡もない。 均一ののっぺりとした闇、壁。 闇とはこういうものなのか。 闇は発光しない。 闇は沈黙する。 闇は振動しない。 闇の中に埋まる? 壁の中に埋まる? 塊なのか、広がりなのか。 それさえも解らない。 それが私を身動きできなくしている。 それが暗黒の力かもしれない。 さて、と。

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