バトンプロジェクト:二坪の眼
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[507]世間の枠
by aoki@dwks 
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[2019/07/22(月) 11:44:10]
一瞬、強い香りが鼻を突いた。
それは、人工的な香り。
きっと、人が肌に付けるものだろう。
しかし、度が過ぎては嫌味だな。
息苦しい。

わたしはベンチに横たえた身体を起こした。

ほどなく強い香りは風に流されていった。人が通り過ぎて行ったのだろうか....。

両足を地面に下ろすと、コツンと何かにあたった。
屈んで覗いて見ると、木製の枠だった。
右手に拾い上げてみる。
A4サイズのコピー用紙ほどの大きさだろうか。
細身の角材をビス止めした簡単な造り。
市販のものではない。
自作枠。まだ新しい。
一辺に何か書いてある。肉筆だ。

「世間の枠」。

はて....?

足下に転がっていた世間の枠。
いつから有ったのだろう?
それが今、わたしの手に有る。

枠の中に自分の顔を埋めてみたり....。
腕を伸ばして遠くの景色を枠の中にはめ込んでみたり....。
世間の枠の視角を眺めてみる。

枠までの距離や傾きによって
枠の中の納まりが異なってくる。
当たり前か。

枠の中が変様すれば、
枠の外も変様する。
当たり前か。

枠の中と外は繋がっているのだから。
それを敢えて枠で仕切るのが
「世間の枠」ということか。

公園を立ち去った「あの御人」も世間。
...
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浮雲

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